三毬打(さぎちょう) ─ 予祝の火祭り ─

三毬打

第七話にて、物語の最後に「三毬打(さぎちょう)」という小正月の行事が行われました。

三毬打(後に左義長と字が変わる)とは、現在、どんど焼きと言われる火の祭りです。
まず、数本の竹を三角の塔のように組み合わせます。
その中に柴や藁をつめ、表面にウラシロ(シダの葉)を、先端には扇を飾りつけます。

1月15日早朝、まだ暗いうちに火がつけられると、瞬く間に大きな炎となって燃え上がり、暗闇を照らします。
まわりには、笛や鞨鼓(かっこ)でにぎやかに囃す人々。
竹の爆せる盛大な音が、邪気をはらうといわれています。

三毬打の中には、正月に領主と領民の間で交わした吉書(よもやま話「吉書始め」参照)の写しもいれます。
煙が天高く上がって天上の神仏に届き、文書の内容が実現すると考えられているのです。

これは後年、門松などの飾りとともに、書き初めを燃やして書の上達を願う行事へと変わります。
が、中世の吉書揚げは、単なる祈願ではありません。
明日の命も知れぬ戦乱の世に、今年の豊作や寿福を「あらかじめ祝う」=予祝の行為なのです。

・・・小正月が過ぎると、いよいよ農作業の始まりです。


◆参考◆
『扇のなかの中世都市』泉万里著(大阪大学出版会)
『戦国の村を行く』藤木久志著(朝日選書579)
ほか



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