ノイズの時代

一節切を吹く

・・・といっても、現代の騒音被害のことではありません。

音楽的にみて、中世はわざと「ノイズ」的な音を好んだ時代なのだそうです。


たとえば、中世芸能である能で使う笛「能管(のうかん)」は、それまでの雅楽の龍笛と外見は同じに見えますが、
内部は歌口(息を吹き込む穴)と第一指孔との間に、”のど”と呼ばれる厚さ二ミリほどの竹の管をはめこんだ構造
になっています。
これにより内径の一部が狭まることで音程が不安定になり、音にねじれ(ノイズ)が生じます。

能管が表現するのは、メロディではなくリズム。
他の楽器と音を調節しあう必要がないので、寸法も一管一管異なるくらいおおらかなんだそうです。

また、囃子方の掛け声や謡の声は、うなることでノイズになり、
能の型自体が、体のあちこちをねじって固定させるノイズだと。。。
なるほど~。


平安時代の雅楽、江戸時代の三味線などが、清音(絶対音感)の世界なのに比べて、
その間の時代は、なぜか、わざわざ清音を壊す方へと向かっていくそうで。

ただ、江戸時代の音も、尺八に関しては「ノイズ」なんではと思います。
尺八の音色の真髄とは、「竹林を吹き渡る風の音」なのだそうですが、
まさにそれは、あのブオー!と響くかすれ(ノイズ)音のことではないでしょうか。

考えてみると、不安定な音や割れた音、かすれなどの「ノイズ」は、音色をより陰影深いものにしますが、
それは自然そのものの音を表すように思います。
だからこそ、自然観豊かな日本人の心に違和感なくなじんできたのかもしれません。


日本文化の流れにおいて、中世でも平安・鎌倉時代は、まだまだ大陸の影響が強く、
真に日本的な世界が確立されるのは室町時代(その代表が、能と茶の湯)。

「ノイズ」こそが日本文化なんですね。



◆参考◆
『世阿弥を語れば』松岡心平編(岩波書店)



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