中世人にとっての蚊とは(狂言「蚊相撲」などに思う)

蚊相撲ごっこ

「・・・暑い夜ともなると、さまざまな招かれざる客が、どっと家の中へ押し寄せてくる。
まず、二種類の蚊が、人の暮らしを不快にするために全力をあげて襲来する。
しかし、連中はなかなか賢くて、灯火にはけっして近づかない。
ところが、無害な珍客の虫たちの多くは、その炎に飛びこんでみずから命を絶つことを辞さない。・・・」
(ラフカディオ・ハーン『新編 日本の面影』池田雅之訳/角川ソフィア文庫)

※上記の文章は、ラフカディオ・ハーンが滞在した出雲の元武家屋敷の庭や訪れる虫たちのことを
情緒たっぷりに書いたものの一部です。(おすすめ本です!)

夏になると、昔も今も変わらず悩まされるのが蚊!!
特に、これから気持ちよく眠りにつこうという時に耳元に聞こえる、あの「ぷーん」という響き!
管理人はさされやすいため、見つけしだい始末しなければ安心して過ごせないくらい嫌いです^^;
上記のような、昔の人の文章を読むと、とても親しみがわきます。

ところで、中世で「蚊」といえば、狂言「蚊相撲」を思い出します。

都で相撲が流行っているので、自分も相撲取りを抱えようと思った大名が、
家来の太郎冠者に命じて相撲取りを探しに行かせます。
が、連れてきたのは、なんと蚊の精。
大名VS蚊の精の取り組みはいかに???

この愉快な発想にびっくりですが、向かってくる蚊の精を、扇であおいで風をおこして寄せ付けないようにする展開や、
あおがれてばたばたする蚊の精の仕草がとても面白いんです。

風がやむと「プーン!」とさけんで向かっていき、またあおがれてバタバタする。
こういう曲を見ると、中世の人って、今のようにパン!と手を打って殺すことはもちろんしていたでしょうが、
それだけじゃない、蚊(自然)に対してのやさしさというか、思いの豊かさを感じます。

自然現象を占うことがあたりまえだった平安時代では、御所に蚊柱が立ったことに対して吉凶を占い、
その場所によって吉にも凶にも判断されたそうです。
蚊柱は、人智を超える畏怖の対象だったのですね。
(『中世の災害予兆 あの世からのメッセージ』笹本正治著/吉川弘文館 歴史文化ライブラリー3)

中世では、まだ蚊帳も普及していませんでした。
貴重品で身分の高い人しか使えず、庶民は蚊遣りでしのいでいたと。。。
(下の画像は、中世絵巻「春日権現験記絵」より。尼僧だけが蚊帳の中で安眠してます)
うわぁ、、、想像するだにおそろしい~。
でも、だからこそ「蚊相撲」のような作品が生まれたのだなぁとも思います。

かといって、私はどうしても蚊は好きになれそうにない・・・
すみません、今日も殺生します!パーン!!

春日権現より


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