秋の夜長に絵巻を楽しむ

絵巻を楽しむ

松虫、鈴虫、きりぎりす・・・
秋の虫たちの鳴き声響く涼しい夜は、物語に親しみたい。

伽倶羅と絵巻を観ています。

このように肩幅の長さに開いては巻き、開いては巻き・・・という動作を繰り返して観賞します。
寝そべって行儀がわるい!と思われるかもしれませんが、このような格好も観方のひとつでした。


観賞する絵として、ほかに屏風絵や掛軸がありますが、絵巻がこれらと決定的に違うのは、
一目で全体を見渡せないという点でしょう。

紙をつないで長くした形態のうち、見渡せるのはほんの肩幅くらいの範囲。
絵巻の役割は一枚の絵をじっくり見せるのではなく、あくまで物語を語ることなのです。

一般に絵巻は、まず詞書(ことばがき。説明文)があり、次にその場面を描いた絵が続きます。
文と絵が交互に繰り返されて、物語が進んでいきます。

雲や霞による場面転換。
一つの場面に同じ人を何人も描くことで、その人の動作と時間の推移を表す「異時同図法(いじどうずほう)」の手法など、
その躍動的な展開の仕方は、中世のアニメーションといわれますが、自分で巻く速さを調節して楽しめるという意味では、
漫画や仕掛け絵本に近いのではと思います。


ところで、絵巻が作られたのは10世紀末といわれます。
しかしその頃のものは失われ、現代に伝わる最古のものは、12世紀はじめの『源氏物語絵巻』です。
その後、『信貴山縁起』や『伴大納言絵巻』『鳥獣人物戯画』など、多くの絵巻が作られました。

説話以外にも合戦絵や高僧伝、寺社縁起などの絵巻化。
当時の一流の絵師や能筆家が腕をふるいました。
印刷技術のない中世で、これらはまさに芸術品、一点もの。
身分の高い、富と権力のある人しか親しむことはできませんでした。

が、室町時代の後期にもなると、経済力をつけた町衆が台頭し、名もなき町絵師による作品なども作られるようになりました。

このような絵巻ひとつの歴史をみても、日本人は昔から絵というものが大好きなのでしょう。
現代では、少し前まで漫画やアニメは子どものものとされていましたが、いまや大人も楽しみ、海外でも大人気です。
平安時代に絵巻が大好きで、たくさん作らせた後白河法皇などは、現代の漫画・アニメ好きな大人と変わりありません。
絵を動かしたい!という気持ち、動く(ように見える)絵を見てわくわくする気持ちは、
現代も中世も、そして大人も子どもも変わりはないのですね。


さてさて、つい時間を忘れて見入ってしまいました。
伽倶羅、そろそろ寝ないと明日の講義でいねむりしてしまうよ。では、今晩はこのへんで。。。


◆参考◆
『美術館へ行こう 絵巻を読み解く』若杉準治著(新潮社)
『すぐわかる絵巻の見かた』榊原悟監修(東京美術)



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